島根県立隠岐島前高校 学校経営補佐官 大野佳祐さん

tankyu

2020年9月27日(日)19:00~20:30
「しつもん×探究トーク」第2弾を開催しました。

隠岐島前高校には、
教員ではない「魅力化コーディネーター」が常駐し、
先進的な教育環境づくりを担っています。

その成果が認められ、公立学校としては全国初の
「学校経営補佐官」に任命された大野さん。

このコロナ禍、4月の緊急事態宣言下において、
全国の学校でなかなか進まなかった授業のオンライン配信を
1ヶ月にも満たない短期間で実現した立役者でもあります。

試行錯誤を繰り返してきた方の言葉には、
前に進むための「本質的なヒント」があるのではないでしょうか。
 

<ゲスト講師>

ohnosan

島根県立隠岐島前高校 学校経営補佐官 大野 佳祐氏

1979年東京生まれサッカー育ち。学生時代にバックパックで世界各国を巡る。
2012年にバングラデシュに学校兼診療所を創設。
2014年に海士町に移住し、隠岐島前高校魅力化プロジェクトに参画。
2019年4月より現職。
 

<対談者>

fujisi

しつもん財団理事 藤代圭一

教えるのではなく問いかけることでやる気を引き出し、考える力をはぐくむ「しつもんメンタルトレーニング」を考案、全国大会優勝チーム、アイスホッケーU14日本代表チーム、さらには地域で1勝を目指すキッズチームまで、数多くの実績を挙げている。現在はスポーツだけでなく、子どもの学力向上をめざす保護者や教育関係者に向けた講演・ワークショップをおこない、高い評価を得ている。著書に『しつもんで夢中をつくる!子どもの人生を変える好奇心の育て方』(旬報社)ほか。

 

教育魅力化プロジェクトの背景

 
藤代圭一(以下、藤代):大野さんのご紹介をさせていただきます。
僕自身、今沖縄と海士町、島根県の離島ですね。海士町というところで暮らしていて、海士町で、、なんて言ったらいいかな、、学校を魅力的にして、地域全体で子どもたちの教育を考えていくという取り組みをされていて、僕自身も大きな影響をいただいている方です。教育だけじゃなくて、地域の暮らし方とか、幸せって何なんだろうっていうことから、まぁたくさん関わりをいただいています。

今日は特に教育分野において、問いかけってどんなところが重要なのかな?とか、探究との関係性って何だろう?ということについて、お話を伺えればと思います。
では、改めまして大野さんよろしくお願いします。

大野圭介さん(以下、大野):よろしくお願いします。

藤代:簡単に自己紹介していただいてもいいですか?

大野:はい、大野圭祐といいます。よろしくお願いします。1979年生まれなので、今年41歳になります。東京の日野市というところで生まれ育って、大学卒業まで実家から通いました。で、大学卒業して、学校法人早稲田大学に職員として入職をして、10年ちょっと働いてこの島に移住しました。今は「教育魅力化プロジェクト」のプロジェクトリーダーをしながら、自分で会社を持ってたり、社団法人を持ってたり、色々なことをやっていますけど、メインとしては「学校を軸とした地方創生」に取り組んでいる感じです。

藤代:はい。では、よろしくお願いいたします。1か月前に、長野県に新しくできた軽井沢風越学園の寺中さんにご登壇いただいた時もそうだったんですが、最初に皆さんに「しつもん」をさせていただきます。僕と大野さんの話を聞くだけでなくて、参加しながら対話を通じて学びを深めていただければと思うので、ぜひチャット欄で教えていただけたらと思います。

『今日、この時間が終わった時にどうなっていたら最高ですか?』

この答えをぜひ、チャットのメッセージのところで教えてください。このイベントの告知ページをご覧いただいたと思いますが、その内容を踏まえて「こんなことがわかったらいいな」とか「大野さんにこんなこと聞けたらいいな」とか「こんなことを感じられたらいいなぁ」とか、どんな答えでも構いません。

ちなみに「しつもん」に答える時のルールというのがあって、3つですね。
しつもんの答えはすべて正解、わからないのも正解、そして他の人の答えをどんな答えも受け止めるというルールでやっているので、他の人の答えを気にせず、ご自身の感じていることを教えていただければと思います。

(コメント)
『地域貢献のヒントがあったら良いと思います』
『何かの発見があれば嬉しいです』
『今住んでいる佐渡島の教育、地方創生に繋げられたら嬉しい』
『地域を元気にする活動を広げたい』
『新しい発見があるといいな』
『子どもたちの役に立つ存在になりたいです』
『教育に対する新たな視点を得られたらいいなと思います』

藤代:みなさん、続々といただいてありがとうございます。地域と学校のつながりを軸とした活動って、できそうでできないところもあるかなと僕は思っていて、でも海外に視察に行くと必ず、子どもを育てるためには地域で取り組まなきゃいけない。みたいなキーワードを耳にすることが多いんですけど、大野さんはもともとそういう考えを持っていたのか、それともある時そう思い始めたのかって、何かありますか?

大野:コミュニティで育てるみたいなのは、実はそんなに思ったことはなくて、ただ「多様な人たちがその子どもに関わると良い」というのは、ずっと思っていますね。

藤代:それはどうしてですか?

大野:例えば、勉強が得意じゃなくてもスポーツがすごい得意な子もいるし、勉強もスポーツも得意じゃないけど、絵がすごく上手い子がいたりとか、よく分からないけどパソコンの雑誌とかいっぱい持ってて詳しい人がいたり。そういう時に「先生とか学校の一つの評価軸だけで何年も評価されなきゃいけない」っていうことにあんまり良さを感じてなかったと思う。

藤代:うん、うん。

大野:まぁ、それはそれでもちろん大事なのかもしれないですけど、横に居て「これだけパソコンのこと知ってるってすごいよね」とか「こんなに色彩感覚が豊かで絵が描けるってすごいよね」みたいなことを言う人が一人でもいたら、その子自身はもっと輝けたりするんじゃないか?僕自身、あまり勉強得意じゃなかったので。。ただ、サッカーだけはすげーできたっていう、俺がそういう風に思っていたところがあるかもしれないです。

藤代:確かに。30人の子どもたちがいたとして、僕が一人しか関われないとしたら、1回その子の価値観とか、その子はこういう子だろうなって決めちゃうと、中々そこから違う側面を発見したり、良さを見つけるのって難しいですよね。思い込みができてしまうというか。

大野:そうですね。過去育ててきた生徒達でも、どうしてもそのデータベースの中から「こういう感じだろう」って当てはめがやっぱりあったりするだろうし、自分自身もまだまだあると思うんですけど。色眼鏡で見てしまったりする場面って、やっぱりゼロじゃない。親でさえそうだと思うから、そこを色んな目で見てあげることの価値はあるんじゃないかな?っていうのは、昔から思っていました。今もそうです。

藤代:学校ではそういうところも大切にしてやっていることとかあるんですか?

大野:えっと、僕らの学校、県立高校なんですけど、先生のほかに今職員室にコーディネーターが5人、入っているんですね。これは教科を教えているわけではないので、評価っていうところから一歩下がっているし、学校出ても学習センターっていう公立の塾があって、その塾は通知表なんか全然ないので、行ってもいいし行かなくてもいいしっていう。色んなスタッフがそこでまた生徒のことを見ていて、寮生が半数くらいいるんですけど、寮のハウスマスターというのは10月1日から2人目が入るんですけど、2人いて、暮らしの中で彼らの良さを見ている。地域は地域で、地域に出た時にちゃんと怒ってくれる人もいるし、ちゃんと褒めてくれる人もいる。
色んな所で色んな人たちが関わるっていのは、小さい島のいいところかなって思います。

藤代:確かに。そうか、海士町の紹介をしないと、皆さんとの認識がずれちゃうかもしれないんで。僕たちが住んでいるこの島は2300人弱くらいの島で、島前高校は生徒何人くらいでしたっけ?

大野:160人

藤代:160人で半分くらいが元々島の子たち。中学校まで島で育ってきた子たちが高校に入って約半分が島外からきているという感じですよね。島外の比率、どこの県が多いとかってあるんですか?全国各地から来るんですか?

大野:まぁ、そう。人数的にも都市部の方が多くって、東京とか兵庫とか多いですけど、北は北海道から南は長崎。海外もいくつかのところから来ている感じですね。

藤代:元々島に住んでいた子たちと、島の外から魅力を感じてやってきた子たちがごちゃ混ぜになって。もちろん先生たちもそうですよね。魅力化の人たちも含めると、色んなバックグランドを持った人たちが関わっているという、島にある学校になります。

そうだ、皆さんも途中でも構いませんので、質問がありましたらどのタイミングでも構いませんので送っていただければと思います。全部の質問にお答えできないかもしれないですが、質問が浮かんだタイミングでチャットの方にのせてください。

では、過去の話も皆さんに聞いていただいた方が分かりやすいかなと思うので。今は160人の高校生がいて、島外・島内の子どもたちがごちゃ混ぜになって学んでいるわけなんですけど。今、うまくいってるけど、過去はそうじゃなかったわけじゃないですか。人数が減ってしまうという時期があったと思うんですけど。その辺の話をちょっと簡単に紹介していただけますか?

DSC04650

大野:そうですね。まぁどこの地域でもそうだと思うんですけど、、少子高齢化とか財政難だったりとか、自治体がもうね経営破綻するみたいな話も出てきたりしてますけど、いわゆる都会が素晴らしい、素敵であるっていう、昔ながらの価値観に基づいて、特に親御さんを中心に僕らで言うと「この島を早く出たほうがいい」と。都会でいい仕事に就いた方がいいでしょ?いい大学に入っていい会社に入って。っていう価値観は、まぁ昔からずっとあって、そういう価値観でてきていて。島が衰退すればするほど、そういう価値観がより高まっていくっていう。無理ゲーに入っていて、人は減り続けるし若者は流出し続けるし、、すると相対的に魅力は落ちていくし島は死んでいく。。っていうこの負のスパイラルにほぼすべての地域が入っている状況かなぁ。

僕らは「人の還流」を起こすことができれば、この過疎化っていうものに対して何らかの一つの提示を投げかけられるんじゃないか?っていうところからスタートしていて。

「意志ある子どもたち」がこの島で学びに来る。それは日本全国から留学してくる。まさにここでしかできないことをみんなで学びに来るんだっていう子たちが、都会には絶対いるはずだということを、11年前に町長以下考えて「島留学」っていうコンセプトを打ち出したんですよね。最初でこそ本当に、なかなか学校に行けてなくて、都会の大きな学校で苦しんでますみたいな子ももちろんいたんですけど、今はどちらかというと「こういうwillがあっていきたいです」とか「都会にはない、こういうことを学びに行きたいんです」「将来地方創生に関わりたくて、現場で学びたいです」っていう子たちが増えています。

藤代:なるほど。

大野:県教委としては、どうしてもあの和歌山県の方も入ってますけど、経済的に採算が合わないから、小さい学校を早く統廃合して数を減らした方がいいでしょっていうことは、もちろん県のロジックとしてあるのかなーと思いますけど。

小さい学校が地域からなくなることのインパクトって、高山市とかが出してるデータが実はあって、学校がなくなることのインパクトはめちゃくちゃでかいんですよ。特に若者が一気にいなくなるので。若者がいなくなると活気がなくなるし、活気がなくなるとお祭りができなくなって、ますます活気がなくなって、高齢化率がグンとあがる。

藤代:うん。

大野:それは、なんていうのかな。小さい地域であればあるほど、数字上はもちろんわかるんだけど、歩いてて若者に出会わないっていうこの衝撃は、多分結構みんな感じるんだと思うんですよね。いよいよこれはもうダメだっていう風に、ある意味では諦めていくみたいなことも、全国各地で起こってるんじゃないかなっていうのは想像しています。

藤代:なるほどなぁ。どなたかの本で、著者の方の名前忘れちゃったんですけど、子どもがいなくなるとその地域は未来を語れなくなるみたいな文言があって。大野さんの話を聞いてまさにそうじゃないかなってすごく感じていて。そこに人がいなくなるということも別に諦めていくしかないというか、もう未来を語ったてしかたないじゃんっていう気持ちになっていくんだろうなってすごく思うんですよね。

大野:うん。バトンを渡す先の人たちがいる地域といない地域っていうのは、今二極化しているというか。今も中津川の方がコメントしてくれてますけど、まぁそういうふうに上手くいき始めた事例も数多くあるんじゃないかって思っていて。ただ、どこだけが上手くいくっていうのは、あまり僕は関心がないというか。じゃあ、日本の全部が、全部の地域がちゃんと盛り上がっていく仕組みが必要なんじゃないの?っていうので、公教育に関わってるっていう感じですね。

 

プロセスの価値に気づいた衝撃の体験

 
藤代:なるほど、なるほど。その中で、印象に残っている出来事とか、色んな取り組みされてきたと思うんですけど。最初から一気にうまくいったわけじゃないじゃないですか。特に子どもたちが、活気が戻っていくっていう中で印象に残っていることは何かありますか?

大野:まぁ。そうですね。1個は高校生たちが地域に入って、十何年ぶりとかに祭りを一緒にやったっていうケースがあって。それは本当に地域の人が喜んでたなぁ。一番大きなインパクトとして、僕は残っているかなぁ。

藤代:具体的にどういうことだったんですか?

大野:まぁ、そこにおじいちゃんが住んでて、そこの祭りが全然開催されなくて、よくよく話を聞いてみると、おじいちゃんたちばっかりだから、神輿が担げないということで。

藤代:あぁ。なるほど。

大野:それを若者が、高校生たちがいっぱい入っていって、神輿は担げないかもしれないけど、ちょっとでもできないかみたいなことを提案して、お祭りが復活したっていうね、その日限りでしたけど。これは本当にお年寄りの方々も喜んでたし、高校生たちも自分がやって良かったなーっていう風になってたし。

藤代:なるほど。

大野:あれは、本当に泣いてたお年寄りもいたりして。

藤代:えーっ

大野:それは凄いことなんだなーって。

藤代:それを最初の設置点は、そのお年寄りの人がそう思っているんだっていうのは、どうやって知っていくものなんですか?

大野:授業の中で、地域課題解決型の学習をやっていて、チームで自分たちが見つけた地域課題を解決しようみたいなのがあるんですけど、だいたい自分たちの住んでいる地域、島の子たちですら、自分たちの地域の課題っていう風に、こう課題は何だろうって目線で地域を眺めた子があまりいなくて、その子たちも散々悩んだんだけど、解決したい課題ってあるの?とか最近聞いた課題ってどんなのがあるの?みたいな話をした時に、とある男の子が「僕のおじいちゃんのいる地域が実はこうで・・」みたいな話があって、それで1回聞きに行こうかーみたいな感じで。

藤代:おおー

大野:教員とかコーディネーターとか一緒に行って聞いて。1回目断られるんだけど、もう一回行く。みたいな。

藤代:断られるんだ(笑)僕は、今まで住んできたところって愛知県名古屋市とか、東京都に住んできたから、祭りの重大さみたいなのをあまり知らないまま育ってきて、祭りってあるもので、参加したかったら参加するみたいな感覚だったんですよね。それでも地域、本当にこういった島の祭りはちょっと違うと感じてるんですけど。まぁ、もちろん僕が参加しなかっただけで、地域の祭りを作っている方は同じような思いでやっていると思うんですけど。祭りの意味みたいなのがあるんですよね。

大野:いや、祭りはやっぱすごいなぁと思って。僕も藤代君と同じで全然祭りとか興味なかったし、人混みとかやめてよ、みたいな感じだったんですけど、最初こっちに移住して、しばらくしたら13年ぶりに僕の地区で祭りがあるって言われて、笛か手拍子(てびし)、手拍子っていうちっちゃいシンバルみたいカチャカチャやるんですけど、「笛か手拍子どっちがいい?」って言われて、

藤代:笑

大野:いや、笛は吹けないから手拍子ですかねーって言ったら、毎日6時半から週3回練習があるから参加してねって言われて

藤代:あはははは

大野:仕事めっちゃ忙しいけどーみたいな感じだったけど、まぁ騙されたと思って参加してみようかなせっかく地域に来たしと思って参加してみたら、それがすごく良くて。なるほどこうやって受け継がれてきたのね。この文化は。みたいな。。

藤代:へぇー

大野:自分の中では結構衝撃的でしたね。

藤代:なるほどなぁ。祭りはなくてはならないんですね。その時大野さんが感じた祭りの価値みたいのってどの辺に感じたんですか。

大野祭りの目的はプロセスにあるんだなーって感じて。祭りを作っていく過程が目的なんですよね。

藤代:なるほど。

大野:僕はどっちかっていうと、東京で仕事してて、非常に目的的な人間だったんですけど、祭りで言うと最後当日までに仕上げりゃいいんでしょ?っていう感覚が、僕は多分仕事上あったなぁと思ってて。プロセスで誰かを傷つけても最後結果出せばいいんじゃないの?っていう自分がいたんですけど。まぁ、練習とか言っても、練習時間45分くらいで、あと2時間飲んでるみたいな感じで。

藤代:あははは

大野:行ってる意味あるのかなと最初は思ってた。だけど結局そこで異世代交流しあうとか。

藤代:ああ。なるほど。

大野:練習しながら「ここってどういう風に歌うんですかね?」って言って、知らない人と会っても「僕、最近引っ越してきた大野っていうんですけど」みたいな感じで繋がれるとか。酒を週3回も飲み交わすとか、そこですったもんだでケンカが起こるとかも含めてそれがもう全部その目的なんだよね。

藤代:確かにな~

大野:自分はだからプロセスが目的になったことって、今まで一回もなくて、結構それは衝撃的だったんですよね。

スクリーンショット 2020-10-05 14.21.40

藤代:そうですよね、だって週3回3時間ほど集まる機会があって、練習時間は1時間以下。なんかこう仕事みたいな感覚で行くと、何のためにこれやってんの?って感じになりますよね。

大野:そう。そう。

藤代:でもそうじゃない。

大野:それが価値だった。

藤代:へぇー。そう考えてみると、僕がここに居を構えるようになって半年弱くらいなんですけど、ちょうど新型コロナウィルスの期間と重なっているんですよね。だからそういうの、みんなで集まる機会って体験してなくて、そうすると知り合う機会は確かに少ないですね。限られちゃいますよね。

大野:そう。だから、逆に言うと防犯的な意識みたいなのもあって。近所に知らないやつがいると、怖いじゃないですか?

藤代:うんうん。

大野:だから、早めに祭りとかやってみんな知り合っとこうぜみたいな。多分、島流しの島だからこそあったんじゃないかなぁ?っていうのを思います。

藤代:確かに。

大野:仲良くなって一緒に酒酌み交わした人んちの金とらないだろ?みたいな。

藤代:そうですね、たしかに。

大野:あったんじゃないかなー?昔ながらの知恵だったんじゃないかって思えますね。

藤代:そうですね。そう考えてみると、学校でいう運動会とか文化祭とかっていうのもそういう位置づけなんですか?もともと。

大野:あれは元々、なんか軍国主義の名残りじゃないですか?(笑)

藤代:あぁ、そっち!?関係なかった。。(笑)

大野:詳しくルーツはわからないけど。なんですかね?目的がしっかりしてればいいなとは思いますよね。高校で学園祭なんか見てると、割と作っていくプロセスは生徒たちが自動的に探究してるし、ある意味で競争してるし、隣よりもいいもの作りたいとか。去年自分がやっちゃった失敗を今年何とかリベンジしたい、とか。

藤代:あぁ~

大野:学年を超えて異年齢でやってるのを見ると、あれはあれでやっぱ、ほっといても探究するんだ!みたいな感じるところはありますよね。

藤代:なるほどなー。ずーっと僕たちの話を聞いているとつまらなくなっちゃうと思うので、ぜひここまでの時間で感じたこととか気づいたこととか、発見があったらぜひコメント欄で教えていただければとおもいます。

藤代:佐渡の祭りもすごいそうです。

(コメント)
『現在の文化祭などは学習指導要領で特別活動の一環として児童生徒の自治的活動として実施されている』

なるほど。

大野:学習指導要領に入るまでのプロセスはどうだったんですかね~

藤代:確かに。確かに。

(コメント)
『祭りの価値にびっくりです』

確かにそうですよね。最後で上手くたたければいいんでしょ?と最初は思いますよね。

大野:そう。「笠揃え」って言って、お祭りの前日の夕方に地区の人全員集めて、今年の祭りはこいつらが楽士と先払いていうお面被った人をやるんですよっていう、お披露目の場があるんですよ。

藤代:へぇー

大野:そこへ来ていた、腰の曲がったおばあちゃんから、おじいちゃんから、若者までみんなで集まってこの「笠揃え」をやるんだけど、なんかちょっと感動してしまって。今までこういうことなかったな~みたいな。で、それが仮に下手でもいいんですよね。

藤代:えー!下手でもいいんですね。

大野:下手だったら下手で、話が盛り上がるわけですよ。「わーこいつら下手くそやなー」っていうのは、酒の種になるから。むしろ下手な方が実は価値があるかもしれない。

藤代:へー。おもしろい。いいですねそれ。

大野:それはなんか、日本古来というかね。あまりそういう価値観って西洋の方にはないんじゃないかなぁ?ってちょっと思った。

藤代:なるほどなぁ。おもしろいな。

(コメント)
『プロセスが目的って感じたことなかった』
『コミュニティスクールをやっている地域ですが、地域の声を拾ってつなげていくことが大事だと思う。色んな知恵から生きる力が育つと思う』
『プロセスが目的、プロセスに価値があるという話が新鮮だった』
『博多には山笠があります。地域全体で子どもを育てている感じがあります。挨拶ができる。挨拶ができる地域は貴重ですね』

藤代:確かに。この地域でも挨拶はみんなしますね。

大野:そうそうそうそう。

藤代

(コメント)
『教育関係者ではないですが、とてもワクワクする素敵なトークです』
『ヨーロッパ在住ですが、日本の祭り文化のすばらしさを再確認』

おーすばらしい。ヨーロッパからご覧いただいて。

『プロセスの大切さを感じていたけど、改めて言葉にしてもらえてよかった』
『若い時代に多様性に触れるっていいなと思いました』

藤代:ありがとうございます。そうですね。確かに色んな人がいて自分を知るという側面はありまよね?全然異質な関係に触れていくというところもありますもんね?

 

本当はどう思っているの?を引き出す「余白」

 
大野:リフレクションって、その、reflectって反射っていう意味だから、やっぱ他人がいない限り反射しないっていうのはあるだろうし、自分が主にならないと、反射してこないっていうのはたぶんあるんだろうな。同じ仲間で反射しているのがみえるのと、全然違う老若男女で反射して見えるっていうのは景色が違うんじゃないかなと思います。

藤代:確かにそうですよね。そうなってくると、どちらかというと僕たちはその勝手な論理でコントロールしづらいから同一性を求めてしまう部分ってどこかしらあると思うんですけど、やっぱり異質であればあるほど難しくなるんじゃないかなとか、自分が思ってたところにいけなくなるんじゃないかな。みたいな恐れからなるべく同じような子どもたちにいてもらえた方が楽だし嬉しいみたいなところは、僕は凄く感じてきたんですけど。大野さん、そのあたりはどうですか?

大野:そこは、価値観として学校の中で根強くあるところだなと思います。それで日本の教育が成功してきたし、経済が上向いてきたところもね当時、あったところだし、それでみんなが中産階級になってきたみたいなのもあると思うので、僕はそれ自体は別に、当時の話として本当に素晴らしいなって思うけど、やっぱり教育現場は変わっていかなきゃいけないなって思います。

藤代:それはどんなところに感じるんですか?

大野:なんだろうなぁ。。。ありとあらゆるところに感じる

藤代:(笑)ありとあらゆるところに?例えばでいいですけど何かあります?

大野: えーー。例えば?何だろうなぁ。。。。。
なんか、あの島根県の学校は割と厳しいんですけど、スマホがダメだったりとか

藤代:あーなるほど。学校で?

大野:パソコン持ち込んじゃダメとか、当然ね試験の時は見れない。高校っていうか、入試とかもそうかもしれないんですけど、メモリー合戦みたいな。記憶勝負をここまでやるのかな?みたいなのはあったりしますね。

藤代:なるほど。あれって、全然すみません無知で。県単位で決まってるんですか?

大野:そのー、スマホ使っちゃいけないとか?

藤代:そうそう。

大野:割とそうですよ。

藤代:えーー、じゃあもちろん県立学校であれば基本的にそこに沿って。

大野:そうですね。大まかなルールは県が決めてて。ただほぼ校長決裁でひっくり返せるっていうのはありますけど。校長は意外と権限が大きい。けどまぁ、普通に考えると県の出先機関だからそれに反旗を翻すっていうのは大変ですよね。

藤代:その中でも、まぁ少しずつでもいいから変わっていかなきゃいけないっていう気持ちは、大野さんの中に強くあるってことですよね?

大野:そうですね。アメリカの高校とか行ったら、みんな普通にパソコンでノートをとってるし、先生が授業で「じゃあ、このgoogleドキュメントにみんなでコメント書いて」みたいな感じとか「宿題はこのgoogleドキュメントにコメントすることね。リンク送るねー」ってグループチャットにリンクを送るっていうのを当たり前のようにやっているのを見て、そうだよねー、これなんで日本でできないのかなー?みたいなのは、思いますよね。

藤代:なるほど。なるほど。

大野:その子たちに、日本の教育の課題ってなんだ?みたいなことをプレゼンした時、そんな話をちょっとしたら「社会で使うのはもうわかっているのに、なんで制限するんだ?」みたいなことを問われて。

藤代:あー。子どもたち側から?(笑)

大野:(笑)そう。なんかすみません、みたいな。

藤代:確かにそうですよね。それが普段の授業から。さっきの祭りの話じゃないですけど、この地域にある課題とか、学校にある課題みたいなのにアンテナ立っている生徒たちだから、逆にそこはどうして制限するんですか?っていうような思い描く生徒たちが出てきた。

大野:アメリカでプレゼンした時にそういう話になりました。

藤代:なるほどなぁ。結構、生徒側から色んなアプローチがあって「こういうのを直したい」とか「こういうのを変えたい」とかって、島前高校はよく聞くんですけど。例えば、この前だったら制服を今まで男の子用、女の子用みたいなのを決めてたけど、そうじゃなくてパターン1、パターン2でしたっけ?

大野:タイプ1、タイプ2

藤代:タイプ1、タイプ2のどちらを選んでもいいというような形に変わったんですよね?

大野:そうそう。

藤代:これも生徒たちから上がってきたんですか?

大野:そうですね。まぁ地域課題解決型学習の中で、地域課題の前に自分たちの周りに課題があるんじゃないかみたいなことを言った生徒がいて。それなんなの?って聞いていくと、LGBTQの子がいて、本当は男の方の制服着たいんだけど、女子生徒だから着れない、みたいなのがあって。そいつは身体は女の子なんだけど、心は男の子で、自分の卒業式には男子の詰襟で参加したいって語ってたのを聞いた子が「それ課題じゃない?」っていう話で、結構先生方と折衝しながら動かしていったっていうのはありますね。

藤代:学校のルールを変えていくみたいなところって、簡単にできるものなんですか?それとも、色々順を追って色んな人に話をして、本当に必要なのかを先生と一緒に考えていくんですか?

大野:もちろん、それは当然すぐにはならなくて、結局そのチームは先生を、当時の生徒部長を説得しきれずに時間切れになっちゃったんですよね。2年生の終わりまでに仕上げられなくて。で、これで潰えたかな?と思ってたら、そのチームの言い出しっぺの男の子が「ここまできたら、なんか諦められないでしょ」とか言って。自分のチームは解散しちゃったんだけど、もう一回当事者の女の子を巻き込んで、共に立ち上がって、僕もそこに巻き込まれて、本当にこれ実現したいんだけど、どうしたらいいか?みたいなことをみんなで話して、こういうふうに進めていったらできるかもしれないねっていうので、管理職と交渉したり、生徒部長と交渉したりして、最後は先生の方から「もう規定を変えよう」っていう提案があって、規定が変わったっていう。

藤代:すごいなぁ。すごいことですよね。僕、当時の高校生活を思い返して、なんか私立で割と校則が厳しい学校だったんですね。例えば、髪の毛が耳にかかっちゃいけないとか、襟足もブレザーにかかっちゃいけないとか。だからそういうのって、そのルールできたからそれに従わなきゃいけないってどっかで諦めてて、それに従順に従うふりして、ちょっとだけ抜け道を探しながらやるんだけど、結果的には友達と愚痴を言い合うだけで、どうやったら、バレずにいけるか、みたいなことをやるしかなかったなぁと思ってて。そこに「どうしてこのルールなんですか?」とか「このルールはどうやって決まっているんですか?」っていうことを言おうとも思わなかったし、しょうがないかな。と思ってたんですけど。すごいですね。そう考えてみると。

大野:本当に感心します。最初は制服なくした方がいいんじゃないか、ってね。私服だったらそういう苦しみを味わう子がいなくなるんじゃないかといって、校内でアンケートをとったら「私はファッションセンスがなくて、服もたくさん持っていないから、私服になるのいやです」っていう子がけっこういて。

藤代:なるほど

大野:「そっちの気持ちもわかるー」とか言って、ずっと悩んでましたけどね。

藤代:そうですよね。なるほどな~ちょっと皆さんのコメントからも拾わせていただければ・・

(コメント)
『私は、あまり意見や考えが一致する方向に進むと本当にそれでいいのかな?と不安になってきます。違う考えや意見が出しにくくなってきているその状況が一番怖い状況だと思います』

というコメントをいただきました。まさに大野さんが言ったことの課題感と近いかなと思うけど。なんかその同調なんですかね。他の人もこう言ってるから私もそうだと思います。ということよくあると思うんですよね。本当はそう思っていなくても。その辺ってどうやって見極めていくんですか?

大野:まぁ、でもー、時間をかけて一人一人と向き合うしか本当はないんです。多分ね。私も同じって言ったけど、どこが同じだと思った?とか、

藤代:あぁ。なるほど

大野:本当はゆくっりやりたいですよね。だけど、例えばZoomとかでも、ABCがあった時に、じゃABCどれか選んでくださいっていうと選べちゃうんだけど、本当はAとBの間の、A.B(エーテンビー)みたいなところがあったりするはずなんだけど。効率化によってそれが奪われちゃったりとか「もう意見表明するの面倒だから前の人と同じでいいや」とか。別に意見が同じでも全然いいんですけど、なんか「面倒くさいから一緒でいいよ」とか、そういうのは感じますよね。

藤代:そうか、確かに。

大野:そうそう、おっしゃる通りで↓

(コメント)
『自分の意見を言えないのは、聞き手の問題』

っていうのは、本当にその通りだと思うんだけど、それに1対40人とかで授業をやってて、中々自分の意思表明するの苦手っていうシーンはあるわけです。その時に「同じでーす」みたいな時に、何が同じだったのか?とか本当にゆっくり聞く必要はあるかなぁ。

藤代:そうですよね。

大野:うん。

藤代:なるほどなあ。その「同じでーす」の背景も違いますよね。なんかすごくみんなに対して気を遣える子だと逆に自分の意見あるけど、ここでいうとみんなの時間を奪っちゃうから言うのやめようとか、そういった部分もあるじゃないですか。なんていうか、逃げてるわけじゃないんだけど、まぁここではいいや。とか。そういった側面もやっぱり出てくるから、難しいですよね。確かに。

大野:そうですね。まぁ色んな事情とか状況とか、体調もあるだろうし・・

藤代:うん。確かに確かに。
 
1E7EBD07-36D6-470A-AB81-FEE8938EF367

大野:いろんなことがあって、そういうふうに言ってんだろうなとか。別にそこでジャッジすることは全然ないんだけど、例えばその発言をし終わった後に、「本当はどう思ってるの?」って聞いてあげられるとか、そういう余白がこちらにあることって、けっこう大事なんだろうな。みたいなのは思いますよねー。祭りの練習後の飲み会みたいな感じですよね、きっとね。

藤代:えー、どういうことですか?

大野:練習中は結構マジだからみんな聞けないんだけど、飲み会になることで、「さっきのところリズムわかんないんですけど」って言えるみたいな。なんとなくあるじゃないですか。

藤代:へぇ。そうか。ちょっとゆるんだ時に。

大野:そうそう。

藤代:確かに、ずーっと張りつめていると聞けないですよね。

大野:うん。

藤代:なるほどなぁ。

大野:教室の教壇に立っている人間と、椅子に座っている人間が分かれている状況で「どう思ってるの?」って言ってもなかなか本音が出てこない。

藤代:確かにそうですね。

大野:終わった後に、水道のところでたまたま生徒と会って「さっきのあれ、本当は違うと思ったんじゃないの?」みたいな。

藤代:ふふふ

大野そういう問いかけとかは、ゆくゆく大事なんじゃないかなぁ。

藤代:確かにそうですね。アイスホッケーの代表チームと関わった時に、20歳以下の。アイスホッケーって競技特性としてけっこう複雑なスポーツで。足がスケートで、上半身でスティックを操らなきゃいけないから、けっこう難しいんですよね。かつシステム的な戦術というのを決められてて、6人いたら6人で決まった動きがあるんですよ。代表レベルになると、求めるレベルもすごく高くて、戦術を理解していなくても、みんな頑張んなきゃいけないんですよね。

そんな中で、ちょっと見てても、みんなに「分かったか?」っていうと「分かった」って言うんです。でもどう見てもプレーはできていないんですね。その時に、僕たちがコーチ陣のみなさんと一緒に試したのが「分からなかったら分からないと言ってほしい」ということをちゃんと伝えたことと、その雰囲気を作ろうということを言って。やっぱ代表レベルぐらいになると強く求めちゃうんですね。「代表選手なんだから分かるだろう」とか「高校生なんだからできるだろう」とか。そういうことをついつい言っちゃいがちなんですけど、それをやめようとみんなで話した瞬間から、戦術理解度が上がったんですよね、みんな。分からないことを分からないと言えるようになってから。

これは、今、大野さんの話をきいてて、ああ確かに「余白」というような部分とか、「弱さを見せられる」とか、「理解していないことをちゃんと理解していないって言える」みたいなところを作っていくって大事だなぁと思ったんですけど。なかなかでも「効率化」を考えるとできないですね。

大野:そうそう。先に進まなきゃいけないとか、急がなきゃいけないとか色々あると、なかなかそうはいかないだろうな。本当はそうじゃいけないと思うんだけど。
明らかに数学とか分かってないけど、先に進まなきゃいけないじゃないですか。

藤代:そうですよね。

大野:大体、1年生の単元が分かってないのに、2年生いったりするやつもいるし、中学校の単元分かっていないけど、高校に来ちゃいました、みたいなのもいるし。ずーっと「分からない」って言えなかったと思うんですよね。どっかでそれをちゃんと拾える場が公教育の場であるといいなぁ、っていうのはすごい思うけどなー。

藤代:分からないって言えないなぁ。

 

ワンダーの「入り口」に立つために

 
大野:いやーけっこう難しいですよね。だからいくつになっても新しいことに挑戦することとかってすごく大事だと思うし、自分が素人になれる経験ってすごく大事だと思うんだけど。

藤代:そうですね。確かにっ!

大野:そう。だから僕、来年田んぼやって、田んぼの素人として分からないから人に聞きまくらなきゃいけないし、恥ずかしいんだけど聞かないと分からないみたいな。

藤代:そうですね。

大野:本を読めばさ、分かるのかもしれないけど、それだとコミュニケーションが減っちゃってつまらないから。「分かんないんですよー」って言いながら、酒でも持っていって一緒に飲みながら田んぼじゃない話もしようかなって思ってますよね。

藤代:なるほど。そうか。分かんないって言える経験ないですね。素人になれる。どんどん少なくなっちゃいますね。僕たち大人になると。

大野:そうね。特にね、先生なんてやっぱり知ってなきゃいけないみたいに当たり前になっちゃってて、親御さんもそういう風に思っているところあるんですよね。でも、別に先生だって知らないことあって当然でしょ?っていう、そういう時先生も「やっぱり俺も分かんないんだ。みんなで一緒に考えよう」って言える方が盛り上がるんじゃないかなっていっつも思う。

藤代:確かにーそうですね。

大野:なかなか、それが許されないっていう。今日話を聞いてくれてる方はもしかしたら違うかもしれないですけど、割と日本全国で起こっていることって「俺は知ってるんだよ」っていう感じがが多いんじゃないかなーと思うし、先生たちが新しいことに挑戦して失敗するとか、全然分かんないっすと言って人に話を聞くとか、挑戦する余白みたいなものがちょっと足りないのかもしれないなって生徒の余白の話もしたけど、先生の余白も足りないのかもなーって。

藤代:思い返すと、僕もともとサッカーのコーチやってたんですけど、コーチなんだから子どもよりうまくなきゃいけないし、子どもたちより知らなきゃいけないと思ってたんですよ。もちろんその側面もあると思うんですよ。めちゃくちゃ下手くそなコーチはなかなか信頼してくれないと思うし。

いつからかやっぱり、知らないということの方が子どもたちが伸びるキッカケになるんじゃないかって思ったことがあって、コーチもわからないから一緒に考えようよって言うと、最初は「コーチなのに知らないの?」って言われるんですよね。

大野:絶対そうでしょうね。

藤代:それが怖くて多分言わなかったんですよ、僕は。子どもたちから信頼されないんじゃないか?って。当時はもうちょっと曲がってたから、舐められるんじゃないか?って。でもそれを貫いてやってたら、逆に子どもたちが自分たちで考え出して、コーチ頼りにならないからちょっと僕たちでやるわ、みたいな関係性ができて、もちろん、僕は僕でできることを一生懸命やってそんときはすごく楽しくなって、というか肩の力が抜けたって感じですかね。それはすごく感じたかなー

大野:僕らも子育てとかすると超ド素人になるわけですよね?生徒にとっては進路とかも超ド素人だからー、同じなんだよなって思うと、全然責められないというか。進路でね、プラン考えてて、ちゃんとプランBとかCまで用意するんだよって言うけど、じゃあ、僕に子育てでプランB、Cがあったかっていうと全然無くて、Aに全力で・・・例えば。そういうこと、すげーあったなーって思うんですよね。

2人:笑笑

藤代:確かにそうか、そう言われてみたらそうですよね、面白いなー。
ぜひ途中でも質問いただけたら、大野さんにぶつけていきたいと思うのでいただけたらと思います。

あ!「筆記用具用意してますが、何か質問とかありますか?」ということで、
しつもんしましょうかね。えーー、ここまでの話題とかで皆さんと一緒に考えたいことって大野さん、何かあります?

大野: : みなさんが最近、素人になった体験を教えてくださーい。

藤代: いいですね!「あなたが最近、素人になった体験はなんですか?」

大野: あー、Zoomね。確かに、みんな遠隔授業とか全然できなかったもんなー

藤代

(コメント)
『ピアノを明日から習い始めます』
『英会話レッスンを始めました』

『50歳で教師になった』
『陶芸の授業』
『コロナ対応』
『動画の作成』
『キーノートの使い方』
『ギター買いました』

土づくりの方もいらっしゃいましたよー

大野: お!僕も来年から田んぼ始めようと思ってるんですよー

藤代:すごいな。結構みなさんチャレンジされてますね。新しい素人体験。

大野:おw『カブトムシの卵探し』

あーいいですね、
『夫婦関係はいつも素人ですね。笑。』って。

笑笑。僕も2回目の結婚ですけどね、いつまでたっても素人ですよ。

藤代:おもしろい!

『メダカの飼育』
『吹きガラス』

大野:なんか、動画作成とかも本当はもう生徒に聞いた方が速いんですよね、きっと。

藤代:いやーそうですよね、すごい上手。

大野:生徒とかに教えてって言ったらめっちゃ盛り上がるんじゃないかなー。僕もすごい舐めてたんだけど、女子生徒たちが絶対読めとか言って「アオハル」を読めって言われて、あれやっぱすげー良くて、こんなテーマってあるんだなーっていう気づきがあったりとか、これは俺らが読んでたのとは全然違うなって思って。レポートにして送ったんですよね、彼女に。

藤代:えーおもしろい。

大野:めっちゃ喜んでましたよ。

藤代:僕は特に小学生とかと関わることが多いから、小学生って自分の好きなものに対して得意げに語ってる姿を見るのが好きなんですよね。目を輝かせて「知らないの?」みたいな感じで。フォートナイトとかスイッチの話したら彼ら止まらないしあれはすごいですよ、もういいよって言うくらい話始めて。あれはすごいよなー

大野:『車をキャンピングカーに改造』素人の領域を超えてるよ。笑。

藤代:できる生徒に教える立場になってもらうのはいいですねー。そうですね、確かに、子どもたち生徒の方ができることたくさん増えてて、僕たちが知らないこと。

大野:いやーいっぱいあるもんね、そういうのねー

藤代:みなさん、結構、素人体験ありますね。

大野:やってますね、素晴らしい。

IMG_7159

藤代:今日、大野さんいくつか、用意しているしつもんがあるんですよ。例えば、探究することで得られるものってなんだろう?っていうことを前回も聞かせてもらってて、大野さんは探究することで得られることって、聞かれたら何て答えると思いますか?

あ、これをみんなに質問すればよかったんだ!
皆さんも考えてみてください。

「探究することで得られることはなんだと思いますか?」

このしつもんの答えをぜひ、
コメント欄で教えていただけたら嬉しいです。

『人生の豊かさ』
『創意工夫』
『その人となり』
『学びの実感』
『自分自身を深めること』
『発見』
『楽しさ』
『新しい出会い』
『自分の本当の欲求』
『好奇心』
『ワクワク』
『繋がり』

すごいなー皆さん、パッと出てくるんですねー
大野さんは、聞かれたら今だとどんなふうに答えると思いますか?

大野:こないだ英語の先生が言ってて、本当にそれスッゲーいい言葉だなって思ったんだけど、

探究のスタートってやっぱりワンダーじゃないですか、それが探究が満ちてくるとワンダフルになるっていう話があって、まさにそういうことなんだろうなーって

藤代:なるほど。

大野:皆さんが今書いてるそういうワクワクする気持ちとか可能性の広がりとかって、自分の気持ちがワンダフルになるってことでもあると思うし、誰かとの関係性がワンダフルになるとか、自分のこの分野で自分の気持ちがワンダフルになるとか、ワンダーから始まってワンダフルになっていくっていうのが探究の醍醐味なんじゃないのかなーってのがありますよね。受け売りで申し訳ないんですけど、本当にそういうのがあるんじゃないかなーって思いますね。

藤代:大野さんはワンダーの取り扱いというか、どのようにそれを作っていくとか、意識していることってあるんですか?

大野:子どもたちは、特に小さい子とかはそうだと思うんですけど、常に疑問を持ってるじゃないですか。けど、大人になるにつれて、この場では聞かない方がいいんじゃないかな?とか、これ聞くとバカだと思われるんじゃないかな?とか思って、どんどん聞くのをやめてってたりするんだけど、たぶんそれはもう、うちの2歳児ですら持ってるから、小学生中学生高校生大学生、皆さんが関わる世代の子たちはみんな持ってるはず。

なんだけど、なんとなくやめちゃってるみたいなところを、ゆっくり聞いてやるみたいなのが僕は結構大事かなと思ってて「最近どうなの?」みたいな話から「進路どうするの?」「そうなんだ、へぇ~、なんでそれ思ったの?」とか「いつそう思ったの?」みたいなのは、

ワンダーの「入り口」は彼ら自身も出し方がよく分かってなかったりするから、その感情の発露の部分をどこに作れるか、接点をどこに作れるかみたいなのは、押したり引いたりしながらやってるかなーってのは、あんまり意識的にしてないかもしれないですけど。

藤代:確かになー。驚き、わーこうなってるんだ!っていう発見があると、探究につながっていくってことですよね?

大野:うん、次に進んでいくって感じなのかなー

藤代:子どもたちにはもともとそれがあって、疑問に思う力とか、何かに驚いた体験とかはあるんだけど、なんかこんなことを気にしてちゃダメなんじゃないなーっていうのも同時に抱えていくってことですよね?

大野:うん。

藤代:確かになー。抑圧した方が関係性においては楽なこととかたくさんありますよね。今、そういうことやってる時間じゃないしとか、

大野:そうそうそう。大人になればなるほど、隣のあいつの質問に比べて俺の問いってめちゃめちゃバカっぽいから言うのやめようとか、それにあんまり優劣ってないんだけど。

藤代:そうですよね。確かに。そう言う意味では、最近疑問に思ったこととか、そういったものを僕たち大人も大切にしていけるといいですよね。

大野:そうですねー、だから大人たちがやっぱり、ワンダーの部分をあんまり隠しちゃいけないと僕は思っていて、もっと大人たちが発露した方がいいんだよなーっていう。だけど、学校の職員会議で、これいうと空気読めない先生になっちゃうなーとか、、

藤代:そうですよねー

大野:そこはやっぱり「そもそもこの行事の目的ってなんなんでしたっけねー?」とか「うちの学校の教育目標に照らし合わせて必要な行事なんでしたっけ?」て言うワンダーの部分てみんな本当はちゃんと持っているから、発露した方がいいよなーって。

藤代:確かに。すごいくだらない最近の僕のワンダーをシェアしてもいいですか?

大野:もちろん!

スクリーンショット 2020-10-05 14.16.20

藤代:最近、銭湯に行ったんですよ。僕あのサウナが好きで、サウナ行っては水風呂に入るって言うのを繰り返していくんですよね。繰り返していくとすごく気持ちよくなるんですよ。すごいくだらなくて申し訳ないんですけど、水風呂に入る前にお湯をかけたり水をかけたり、汗を流すって言うのは僕の中で常識なんですけど、って言うかお風呂にも書いてあるし。そういうことをせずに、ドボンと入るおじちゃんて必ずいるんですね。

大野:はいはいはい。

藤代:それに対して僕はどうしてそうなるのかなー?って、ずーっとこの前観察してたんですよ。「なんで水浴びないんですか?」って言えないんで、怖くて。だから色々試してみて、まず目が悪いんじゃないかなーと思って、その人がサウナから出る前にサササッと出て、その人が水を浴びる前にと思って水を浴びたんですよ。さすがに目の前のやつが水浴びしてたら水浴びるかな?と思って、やったんですけど全く関係なくって。笑。そのままドボン!と入るんですよ。

これはなんでだろう?って、最初は怒りだったんですよ。だって汗浮いてるじゃんて。これが興味に変わってくると、それを知りたくて仕方なくなるんですよね。だから同年代くらいの人にサウナに入ったあと水を浴びるのかどうかってことを聞いて、もし浴びないって人がいたらどうしてそうなのかってことを聞いてみたいんですよ。

2人:笑笑

藤代:もしかしたら、僕が知らない高揚感とか、気持ち良さがあるかもしれないじゃないですか?

大野:あーー想像を超えたものがね。

藤代:僕はあくまでもルールに従っているだけだと、だからお前には分からないかもしれないけど、本当は浴びない方が本当は気持ちいいんだよって言われたら、なるほど!ってなるかもしれない。なかなか出会えないし、失礼かもしれないから聞けないんですよ。でも、それを考えているときは楽しいですよね、結構。

大野:そういうのは、創意工夫とか、創造性が生まれてくることの源泉になるんだろうなと思ってて、そこで喧嘩すると言うよりは「その人の超快感を担保するために必要なものってどういうことなのか?」みたいなところが、本当の創造性とか創意工夫の部分なんだろうなーっていう、探究のいいところなんじゃないかな。

藤代:そうですよね!どうなんだろうなー、気になるんだよなーもし今日ご覧いただいている方で、で水かけないんだよって人がいたらその気持ちよさについて教えて欲しい。(笑)

あーーなるほど。

(コメント)
『子どもたちがプールに入る前に地獄のシャワーを浴びますが、本当ならば、ドボンと入りたい!ってのと同じじゃないか!?』

確かに、近いかもしれない。

大野:(笑)的確な分析が来るんですね。地獄のシャワーって言われてるんですね。(笑)

藤代:(笑)確かに、あれってドボンて入るよりもかけてる時の方が冷たく感じますよね。

あと、大野さんに聞きたいなと思ったのは、もともと僕ら問い、しつもんていうのを大事にしてて、もちろんそれだけに拘ってるつもりはなくて、手段のひとつとして大事にしてるんですけど「しつもんと探究に関係性があるとしたらどんなことがあるかな?」っていうのを聞いてみたいんですけど、、

大野:しつもんと探究の関係?

藤代:そうですそうです。

大野:しつもんは探究を加速させるっていう関係性じゃないかな?と思っていて、
自分自身への質問をそうだし、他からの質問もそうだし、自分が誰かに問いかけることで自分が気づくことみたいなものって、自分の探究を前に進めていくことにつながるんだろうなーって思う。関係性としてはそういう感じなんじゃないかな?

藤代:なるほど、加速させたり、そうか、加速させる効果があるのかな。

大野:まあ、場合によっちゃ止めちゃうかもしれないですよね。

藤代:そうですね、確かに確かに。

大野:アクセル、ブレーキっていう感じなのかな。「本当にそれでよかったんだっけ?」っていう「一旦停止した方がいいんじゃない?」というパターンの問いかけもあるだろうし「誰が喜ぶんだっけ?」という質問もあると思う。それがアクセルになったり、ブレーキになったりするのかもしれないんですけど。

藤代:確かに確かに。良かれと思って質問したことが、ある人にとっては悪い意味でブレーキにつながり、ある人には良い意味でブレーキとなり。

大野:うん、でもアクセルとなるパターンもあるだろうし。

藤代:なるほどなー。あ、質問きてますね。

(コメント)
『探求を加速させる問いかけをする時に大切にすることは、どんなことでしょうか?』

大野:僕はやっぱり、意識しているのは「気軽さ」かなと思ってて。「それはそうなんだねーへーー」とか言って「どーいう風になってるといい感じなの?」とか「その課題が解決されると誰が喜ぶの?」とか「その顔って誰を思い浮かべてるの?」とか、そういうことが結構多いかなー生徒との中でいうと。

藤代:生徒の中で、より具体的にしたり広げるきっかけを作っていくってことですか?

大野:うん、それとか、ワンダーの入り口に立ってもらうとか。ざっくばらんな質問をしていくことの方が僕は多いかもしれないですねー

藤代:そういう意味で「気軽さ」っていうことですね。確かにそれは僕もすごく同じような感じを抱いてて、世間話、会話をするように質問を投げかけられたらいいなーと思っていて、

今から大切な質問するぞーっていう感じで出すと、やっぱり子どもたちも身構えちゃって、ちゃんと答えなきゃとか、良い答えをしなきゃって緊張感が強くなりすぎる場面てすごくあると思うんですよね。

さっき大野さんの言ってた祭りの準備をする飲んでる時間に近いような関係で、問いかけられたらいいなってのは感じてますよね。でももちろんすごく難しくて、相手との距離感とか関係性がすごく大事になってくるから、そこまでにたどり着けなくて・・・っていうのもよくありますけどね。

大野:もしかしたら、どっちかっていうと、そこで自分が発言してもいいんだっていう雰囲気を作るために問いを投げていることの方が多いかもしれませんよね。

藤代:なるほど、なるほど。

大野:だから、良い質問をするためにどうしたらいいか?ということはあまり考えてないかもしれないですね。その子が、その場で、ちゃんと自分の声で発言できるように問いかけてる方が、僕は多いのかもしれません。

31CF0BE8-DB9D-434A-9C71-9983D420CF9C

 

人を成長させる3つのポイントとは?

 
藤代:あとは「人ってどんな時に成長するんだろう?」ということについても話を伺いたいなと思っていて。さっきのワンダーも一つの答えかなって思うんですけど、もし他にも大野さんなりに感じていることがあったら教えて欲しいんですけど。こーいう瞬間とかこーいうきっかけが人を成長させるんじゃないかなっていうご自身の経験があれば。

大野:なんかそのー、僕の前任とも話をしていて最近思うのは「熱狂と越境と逆境」っていう、この3つが人を成長させるポイントなんじゃないかなと思っていて。

例えば、部活でもなんでもいいんですけど、すごい強い相手がいて、なんとか倒したいという「逆境」もそうだし、例えば、サッカーにすごく打ち込む、AKBのことなら誰にも負けないくらい詳しい、このDVDは擦り切れるくらい観たとか、そういうオタク気質が「熱狂」まあそれが探究につながるかもしれないし、もう1個は、自分が勇気を持ってコンフォートゾーンを飛び出してみた「越境」体験ていうのがその人を大きく成長させるんじゃないかなーと思っていて、

その3つの要素のうち、2つがいいタイミングで重なってくるとか、もしくは3つが重なり合ったときに人って大きく変わる、たぶん大変なんだけど、それを乗り越えたときに、あれがあったから、という振り返りをすることが多いんじゃないかな?っていうのは、なんとなく最近思ってますね。

藤代:おもしろいなぁー。「熱狂」「越境」「逆境」この3つ。そう考えてみると、ついつい探究ってなると、熱狂するものを探していこうみたいなのがありますけど、逆境という立ち位置に立つとそこについて知ろうとするし、チャレンジしようとする気持ちは生まれてきますね。

大野:そうそう、だからさっきの制服のチームも、簡単にはいかなかった訳ですよね。生徒たちからは総スカンを食って、逆境に立たされたと。

藤代:なるほど。

大野:で、時間切れになっちゃって、生徒部の先生も乗り気じゃなかったんで。
一時期熱狂してたくせに、逆境に立たされると熱が冷めてくる、みたいな。笑。

藤代:あーでもありそう、それは。

大野:そのときにチームの人間が1人越境して、本当にLGBTQに悩んでる人に繋がろうと別のチームを作り、僕のところにも来て、勇気を持って飛び込んできて、僕はコーディネーターですけど、コーディネーターと生徒たちという「越境チーム」ができて、もう一回「熱狂の渦」に巻き込まれた。

藤代:なるほどなーーー。その瞬間にいる生徒たちの目とか表情って想像できますもんね、なんとなく。

大野:そうですね。

藤代:おもしろい!これは意識して作ってくと繋がってくんですかね?そこに。自然に生まれてくるものなのかな?

スクリーンショット 2020-10-12 0.17.36

大野:たぶん、自然と生み出せるものって1個もないと思うんですこの中で。んーでももしかしたら「逆境」だけは自然と生み出されてくるパターンもあるかもしれない。「熱狂と越境」は少なくとも自分自身が探究をし始めないと生まれてこないもので。誰かに渡された熱狂って熱狂じゃないはずなんですよ。これ、あなたの熱狂ねって渡されたことって1回もないですし。もしかしたらいきなりチケット渡して海外に行ってこいみたいなことあるかもしれないけど。

藤代:生まれないかもしれないですよね、そこではね。

大野:そうそうそう。普通に考えると熱狂も越境も、場合によっては逆境も
自分自身が自分自身をドライブさせていかないと生まれないものだと思うんですよ。

藤代:そうか、その部分については意志を持っていく必要があるんだ。ここについて、どうやって考えていくとその3つ全てとは言わずとも、問いじゃなくてもいいんですけど、どんなきっかけがその渦に入っていくコツ?とかきっかけにになるんですかね?

大野:たぶんこの3つのベースにあるのは絶対安全・安心というかHOMEだと思うんですよ。そこがないとたぶん人は、越境も逆境も熱狂もできないと、僕は思っていて。学校がそのHOMEをちゃんと作れる場になればいいなってすごく思ってるんですよ。

藤代:そうか、学校の中で自分らしくいられるとか、自分の考えを発言できるとか
個性を出せるという環境を作っていく。なるほどなー、ベースに安心安全というHOMEがあるかどうか?これ作るのって難しいもんなんですか、学校で。

大野:学校だけじゃなくてもいいと思うんですよね。家庭にあるとかでもいいと思うんですよ。彼氏彼女にも言えるかもしれないし、家族の中にはないけど近くの喫茶店のマスターにはあるというのもあると思うし、

自分の熱狂とかを、こそっと誰かに打ち明けられるような人がいることってすごい価値なんじゃないかなと思ってますね。コミュニティーが必要なんだろうなーっていうのはすごく最近思うことですね。

藤代:ぜひ皆さんにもお聞きしたいんですけど、
「どんな瞬間に安心感を得ますか?」この質問で通じますかね。
「どんな瞬間に安心感を感じますか?」かな。

たとえば僕だったら、自分の話を聞いてもらえたときにそう思える、とか。皆さんがこういう瞬間、こういう場所があると、こういうきっかけがあると安心感を感じるなーということがあれば、教えていただければと思います。

『向き合う人が笑顔でいてくれたとき』
確かに、しかめっ面のときは嫌ですね、ちょっとね。笑。

『ジャッジなしに受け入れてもらえるとき』
『自分の存在を受けとめてもらえたとき』
『家族と一緒にいるとき』
『自分の意見、考えを認められたと感じた時』
『共感されたとき、感謝されたとき』
『ニュートラルに話を聞いてくれて評価されないとき』
『どんな意見も受け止めてもらえるとき』
『アリのままでいられるとき』
『同調してくれる人が1人でもいてくれたとき』
『本心を話せるとき』
『条件付きではない私自身を受け入れてもらえたと感じるとき』

藤代:結構ここら辺は皆さん、答えが似てますよね?

大野:似てる!

『カッコつけなくてもいいと思えるとき』

ここに関して1個エピソードがあって、生徒たちの中で「私どうしてもカッコつけちゃうんです」とか「本当にカッコつけなんです」って言葉が出てきたときって、結構本物だなーって、本物って言い方あまり良くないけど「あーこいつきたなー!」っていう。

藤代:瞬間なんですね!

大野:「ついカッコつけちゃう自分をやめたい」とか「ついええカッコしいの私をなんとかしたい」っていう生徒が相談に来る時って結構本気度が高い時、というか「あーこいつは今越境しようとしているんだなー」って感じるんですよね。ほんとその通りだなって。うん、みんな似てますよね。

藤代:自分の話を真剣に聞いてくれたなって思えたときは、安心できてるなって感覚が生まれるってことですよね。うん、確かにそれは共通する部分なのかもしれないですね。もちろん全員がとは言わないですけど。僕たち、教室なり学校なりコミュニティーなりで、そういう場を作っていけたらいいですよね。

大野:そうですねー、学校の中でも「熱狂、逆境、越境」を作っていけると思うし、別に学校の中でなくても、その環境に身をおく子もいると思うし。自分がより自然体でいられるところを、自分がHOME感を感じるところを生徒たちが自分自身で見つけていけると、実はそれは人生の探究になっていくんじゃないかな。

その発露は学校の外だっていいじゃないかって常に思ってますよね。だけど学校の外にでるとわけ分からなくなって心配になっちゃうっていうのはあるだろうし。そこはコミュニティーでサポートできたらいいよね。

藤代:確かにねー、学校の中だけでは表現できないこともありますもんね。

大野:先生が全員見るのは難しいじゃないですか、その先生のことがすごい好きなパターンもあれば、すげー嫌いなパターンもあるわけで。自分の担任とか思い出しても、すごい好きだった先生とあいつふざけんなよって先生と。そういう時に僕が安心安全を感じて「俺の熱狂ってさ・・・」って話してないから、それはやっぱり無理なんですよ。もしかしたらその時の友達に話したかもしれないし、その時付き合ってた彼女に話したかもしれないし、家族に話したかもしれない。その子が自分らしくいられる場所をどこに作るか、どれだけこっちが種類を作れるかっていうのが、僕は教育の中ですごく大事なことだと思うかな。

藤代:そうですよねー、でも授業の科目が決まっている中で、そこにあい通じない熱狂は話せないですよね、関係ないから。

大野:うん。コロナ禍とかは全部揃っちゃったんですよ。逆境、熱狂、越境が。

藤代:あ!確かに!

大野:だから、ボーナスステージじゃん!と思ってて、めっちゃチャンスやん!と思ってますね。みんなが越境してチーム作らないとこの逆境に対して乗り越えられなくて。それを熱狂で作っていくっていうのがたぶん僕らがやったことだったかな。だから今はいい時代になってきたなって感じがしているかな。

藤代:なるほどなー、今のコロナ禍において大野さんがチャレンジしたことって本当は今日、詳しくお話聞けたらと思ってたんですけど、記事にね、すでになっているので、ぜひそちらを読んでいただけたらと。

▼わずか1ヶ月で全生徒へのオンライン授業配信を実現した
島根県立隠岐島前高校に見る、自律分散型意志決定の可能性
https://greenz.jp/2020/08/21/oki_douzen_koukou/

藤代:このコロナ禍における、逆境、越境を超えて熱狂する、どのように取り組んだかというところをぜひご覧いただけたらと思います。

では、もうあっという間に1時間半くらいに近づいてきてまして、僕たちのこのトークイベントというかどんなイベントでもそうなんですけど、たったひとつの答えがある訳ではなくて、またこれを絶対に伝えたいという気持ちがある訳でもなくて、一人ひとりが問いを持って、この後の時間だったり、明日以降の時間を過ごしていただけたらいいなと思ってまして、

最後に、この時間で生まれた問いは何がありましたか?しつもんはどんなものがあったか?というのを皆さんでシェアして終わりたいなと思います。

「この90分間の中でどのようなしつもんが生まれましたか?」

その答えをメッセージ欄で教えていただけたらと思います。

例えば「どのようにすれば安心な場を作れるだろうか?」みたいな話でもいいですし、「どのようにすれば越境できるだろうか?」とか、どんなしつもんでも構いませんので皆さんの心の中に生まれたしつもんをぜひ共有していただければと思います。

大野さんも最後にぜひ聞かせていただきたいので、まぁ、生まれてなかったら生まれてないでもいいので。笑。

早速ありがとうございます。

『今、何したい?』
『どのような言葉をかけたらその人の第一歩を踏み出すための勇気を引き出せるのか?』
『自分が自然体であると気づくのはどういうことなのか?』
『生徒が安心して学べる場をつくるにはどうしたらいいだろう?』
『どうしたら困ってる人に気付けるか?』
『あなたはどのように目の前の人の話を聞きますか?』
『人は皆、探究できるか?』
『3つのKyouで変わろうとする時に後押ししてくれるの一言は何か?』
『今、何を越えたいですか?』
『逆境を越える自信はどうしたら付けられるか?』
『探究できるエネルギーはどこからくるのだろう?』

大野:みんな、めちゃくちゃいいしつもん考えるなぁー

藤代:大野さん、ありがとうございます。90分改めて、皆さんと同じように問いが生まれてたら嬉しいなーと思ってるんですけど、大野さんの中で何かしつもんは生まれましたでしょうか?

大野:まぁでもやっぱり、皆さんが越えたい自分はなんなんだろう?越えたいと思ってる自分とか、変えたいと思っている自分てなんなんだろう?もしかすると、そのままでもいいと思うんだけど、その辺りのことは皆さんとやっぱりゆっくり話を聴きたいなーっていう、、僕の話とかどうでもいいから。笑。

藤代:笑

大野:みんなの話をやっぱり聴きたいなーっていう。ウェビナーとかではなくてブレイクアウトでね。話できるといいのかなーなんて、、

2人 本当はねー

大野:皆さんたぶん、いろいろな環境にね、家のことも大変だろうし、地域のことも大変だろうし、学校のことも大変だろうし、どこにパワー向けていいかわからないとか、自分が成長してるのか分からないとか、いろいろあると思うんですよね。

こういう場に来るというのがやっぱり最初のスタートだと思うし、ワンダーの入口には立っているんだろうなーっていうのは思うから、どういう風にすればこの先、誰の力を借りればワンダフルに近づけますか?っていうのが皆さんへのしつもんかもしれないですね。

藤代:おーーー!いいですねー!ありがとうございます。

今回の取り組みの僕たちのチャレンジとして、今回の大野さんとの時間をご一緒した方々と別日にですね、皆さんから生まれた問いをシェアして、しつもんに答え合うっていう時間を作ろうと思っていて、それはこのウェビナー形式じゃなくて皆さんのお顔も声も聞ける状態で、全国各地また海外からも参加できる状態で、問いを持ち寄って対話をする時間を作ろうと思っているので、また後ほどそれもメールで日程等をお伝えしますので、ぜひご参加いただけたらと思います。

また来月はですね、沖縄県でサドベリースクールをスタッフとして運営していて、かつ、そこのサドベリースクールで育った宗像蒼(むなかたあお)ちゃんという方をお迎えしてお話を聞きたいと思ってますので、日程がまだお伝えできないんですけど、またお知らせしますのでご一緒できたらと思っています。

また今日、19時より前の時間でご紹介したんですけど、大野さんたちが隠岐島前教育魅力化構想として作っているこの「意志ある未来のつくりかた」という、これからこんなふうにしていきたいよねっていうものが全て詰まった一冊の冊子があるので、ご紹介のリンクも送りますので手に取ってご覧いただければと思っております。

【冊子はこちら】
「意志ある未来のつくりかた」第3期隠岐島前教育魅力化構想
https://miryokuka.stores.jp/

大野さん、最後に改めて、一言いただいてもいいですか?

大野:本当に皆さんのチャットのしつもんに励まされてあっという間でしたけど、あと5~6時間いけるんじゃないかみたいな感じです。笑。とても楽しかったです。コロナは特に本当に大変だったと思うんですけど、あれがあったから今日があるよねって5年後にみんなで言えるように、大人たちが探究していけると、しかも子どもたちと一緒に探究していけるといいんじゃないかなと思っています。

藤代:はい、ありがとうございます。90分間、皆さまお付き合いいただきありがとうございました。大野さんもありがとうございます。

大野:ありがとうございます。皆さんぜひ1回、島に遊びに来てください。

藤代:あ、そうですねーぜひ、ちょっと遠いんですけど遊びに来ていただけたら。

(コメント)
『新鮮な視点をありがとうございます』

藤代:そう言っていただけると嬉しいですねー

『あっという間でした。楽しかったです』

大野:いやー、僕もあっという間でした。

『学校にいる先生ではない安心できる人の存在を知ることができ大変嬉しかったです』

藤代:おー、こうして感想を聞けると嬉しいですよね。

大野:学校にいる先生じゃない、という時点ででおかしいんですけどね。笑。

藤代:笑。そうか、そこもそうか、僕は大野さんのこと結構話させてもらってるから普通になってきちゃったんだ。

大野:うん、そう、その感覚はもう狂ってるから。笑。

『都会の祭り、自治会のあり方を改めて考える機会になりました』

大野:いやーーー、本当にそう!!

『先生以外の人がいる学校を普通の学校にしたい』

藤代:そうか、難しいですね、なかなか仕組み的には。

『先生という呼び方から変えていきたくなりますね』

大野:あー、本当にね僕そうだと思ってて。僕は職員室で大野さんて呼ばれているんですよね。先生同士でも「さん」で呼ぶとか、生徒も先生を「さん」で呼ぶようにすると大分立場が対等になるんじゃないかなと僕はこれ仮説を持ってて、そういう修士論文書きたいなと思ってるんですけど。笑。

藤代:確かに、先生って先生って呼ばれますよね。

大野:先生って呼ばれないと教師としての切り替えができないからだと思うんですよね。

藤代:あー、そうかー

大野:教師として切り替えなくてもいいんじゃないですか?

藤代:うんうんうん。なるほどー

大野:佐藤さんは佐藤さんのままで。どうなんですかねー難しいのかな。

藤代:僕もこの海士町に来てから感じるんですけど、人口2300人くらいの小さな島だと、全てが丸見えというか、良い意味で。だから切り替えようとしても切り替えられないじゃないですか?それがいい方向に向かってるかなっていうのがすごい感じられて。僕はコーチでしたけど、その場所に住んでプライベートで子どもたちに会ったらドキッとするなーってのは少なからずあったなーと思いましたねー。

大野:あるでしょうね。僕らの島にはイオンはないけど、地元のイオンに彼氏とは絶対に行かないって言ってる先生がいたからねー、そうなんだろうなーとは思いますけどね。社会もね、先生に対して厳しいですよね。

藤代:厳しいですねー、確かに。先生が短パンとビーサンで歩いてたらちょっとおー!?ってなりますもん、昔の価値観だったら。

大野:いーじゃないですか別に。海沿いで日曜日に缶ビール飲みながら歩いてる先生いたら話しかけたくなりますよ。

藤代:そうか、そういう隙じゃないけど、人間らしさが安心感を作ってることもありそうですよね。

大野先生たちにとってのHOMEになりたいなって思いますね。

『先生も不完全さを見せながら、生徒と一緒に人として成長していく学校があるとhappyになる人が増えるとおもいます』

大野:先生たちも不完全さを見せながらってありますけど、生徒たちはもう、先生が不完全であることは見抜いているから見せる見せないとかはあまり拘らなくていいと思う。

藤代:(笑)なるほど、バレてる。

大野:うん、でもそれが本当は素敵なことなんだろうなって。生徒と先生が一緒に成長していく学校っていうのは一番HAPPY、それが未来のためになっていくと思います。皆さん、本当に熱心ですね。すごいな。

藤代:では、そろそろ。貴重な時間をおつきあいいただいてありがとうございました。

大野:ありがとうこざいました。

DSC04671

 

あとがき

 
この日の対話は、終始、笑いが絶えなくて。とっても軽やかな雰囲気に満たされていました。「あはははは」とか、(笑)という表現ではどーしても伝わらないだろうなぁ〜と限界を感じており、、大野さんの「かろやかな空気感」に、ぜひとも動画で触れてもらえたら!と思います。居心地のいい空間をつくり、心をほぐしてくれるような関わりはどこから生まれてくるんだろう?そんなことを思いながら聴き入っていました。

力のある言葉には、その本質を捉えきれていなくても正しさをまとって一人歩きしてしまう側面があるなーと私は感じているのですが、この日交わされた対話には、一人ひとりに浸透するような優しい言葉があふれていたと思います。「先生たちのHOMEになりたいな」というフレーズが心に響きました。私たちしつもん財団も同じ想いを持って活動しており、あったかい気持ちになりました。(高橋香織)

 
【動画の配信について】
ご希望の方に1,000円で配信しております。
(※オンラインスクールでのクレジットカード決済となります)

お預かりした受講料は、しつもん財団への寄付として受けとり、
今後の運営費に充てさせていただきます。

スクリーンショット 2020-10-15 19.54.34