しつもん×探究トークvol.4:宗像蒼さん(1)

tankyu
 
2020年11月29日(日)10:00~11:30

沖縄サドベリースクールの宗像蒼さんをお迎えし、
「しつもん×探究トーク」第4弾を開催しました。

公教育とは真逆の教育方針とも言える
サドベリー教育の体験や現状をじっくりお届けいたします。

私たちの中にある「当たり前」が変わるとき、
大切にしたいことが観えてくるのではないでしょうか。
 

<ゲスト講師>

aochan

沖縄サドベリースクール 宗像蒼さん

https://www.okinawa-ss.com/

21歳 サドベリースクール卒業生
現在は、サドベリースクールのスタッフ、イラストレーター/アーティストとして活動しています。サドベリースクールは、アメリカ(ボストン)のサドベリーバレースクールをモデルにした学校です。サドベリー教育の学校は海外、日本にも沢山あります。沖縄サドベリースクールは、開校11年です。

公教育とは真逆の教育方針と言っても過言では無いかと思います。子どもが自ら学ぶ力を100%信頼し、自分の事は自分で考え、みんなの事はみんなで話し合う学校です。卒業生として、また、スクールのスタッフとして、色々なご質問に答えていけたらと思っています。
 

<対談者>

fujisi

しつもん財団理事 藤代圭一

教えるのではなく問いかけることでやる気を引き出し、考える力をはぐくむ「しつもんメンタルトレーニング」を考案、全国大会優勝チーム、アイスホッケーU14日本代表チーム、さらには地域で1勝を目指すキッズチームまで、数多くの実績を挙げている。現在はスポーツだけでなく、子どもの学力向上をめざす保護者や教育関係者に向けた講演・ワークショップをおこない、高い評価を得ている。著書に『しつもんで夢中をつくる!子どもの人生を変える好奇心の育て方』(旬報社)ほか。
 

今日の私は私が決める

 
藤代圭一(以下、藤代):おはようございます。しつもん財団の藤代圭一と申します。
この「しつもん×探究トーク」は4回目になるんですけど、1年前までは、夏に全国各地の皆さん、特に教育関係者の方に集まっていただいて「しつもん力」言い方を変えて「発問する力」をどのようにすれば高められるのか?という研修を開いていたんですが、今年は新型コロナウィルスの影響もあり、皆さんが安心できる場所でご参加いただきたいなと思って、このような会を作っております。今回は、沖縄サドベリースクールスタッフの宗像蒼さんにきていただいております。よろしくお願いします。

宗像蒼さん(以下、宗像):お願いします。

藤代:最初に皆さんにお聞きしたいことがあります。コメント欄で1番、2番、3番を入力していただければと思うのですが。『サドベリースクールを知っています。ある程度知っています』という方は1番を、『名前は聞いたことがあります』という方は2番、『初めて知りました』という方は3番を入力して教えてください。2番、3番の方が多いかな。もちろん1番の方もいらっしゃいます。だいたい同じくらいだと思っていただければ。

宗像:はい。

藤代:では、改めまして。蒼ちゃんのご紹介をしたいと思います。
今、沖縄サドベリースクールのスタッフとして子どもたちと関わっていて、そもそもそのサドベリースクールで育ったというご経験があります。ですので、今日は子どもとしてのサドベリースクールでの経験をお話してもらうこともできますし、スタッフという立場からの考え方も教えてもらえますし、さらに今はサドベリースクールだけでなく、多方面でご活躍されているので、今どんなことに関心があるのかということも、時間があれば皆さんにお伝えいただけるんじゃないかなと思っております。では、蒼ちゃん、自己紹介していただいてもいいですか?

宗像:宗像蒼です。今21歳です。サドベリースクールに10年くらい通っていて、卒業後にスタッフとして関わっています。スタッフとして関わっているのは、1年半かそのくらいです。よろしくお願いします。

藤代:よろしくお願いします。今日は、ずっと僕たちが話を続けるのではなく、しつもんさせていただき、そのしつもんの答えをぜひテキストで教えていただければなと思います。最初の質問は、
「今日この時間が終わった時にどうなっていたら最高ですか?」

90分ほど皆さんの貴重な時間を共にさせていただきますが、今日この時間が終わった時にどうなっていたら最高でしょうか。その答えをぜひ教えていただければと思います。「こんなことがわかったらいいな」とか「こんな気持ちになれたらいいな」とか「こんな発見があったらいいな」とか。どんな答えでもいいのでその答えを教えてください。

(コメント)
・サドベリースクールの魅力を知れたら最高。
・サドベリースクールに見学に行こう、ワクワクとともに見れたら最高です。
・新鮮な感動を感じていたいです。
・子どもたちにとって、より良い環境とは何かを知れたらいいな。選択肢も広がればいいな。
・サドベリースクールについてさらに知りたいという気持ちになったら最高です。
・今日の情報が、今の自分にどう活かせるかわかると嬉しいです。
・サドベリースクールはどのようなものか。そこに通う子どもたちはどのように成長し、どのような未来を築いているか知れたら最高。
・ワクワクできたらいいなと思います。
・新しい可能性につながるきっかけ作り。
・これからの教育について、新しい価値観を知れたら最高です。

藤代:みなさん、ありがとうございます。
大前提として、もちろん、サドベリースクールについての魅力というか、基礎的な情報にも少しずつ触れたいなと思うんですけど、それを全部話しちゃうと蒼ちゃんに来ていただいた意味がなくなってしまいますので、サドベリースクールの説明は、ホームページや関連書籍もたくさん出ていますので、そちらをご覧いただくのが良いかなと思っています。今日お伝えしたいのは、基礎情報は多少お伝えしつつ、そこを通じて蒼ちゃん自身にどんな変化があったか、どういうことを感じてきたのか、それが今の蒼ちゃんにどのように活かされているのかみたいなことは、この時間でしか伺えないので、そんな時間にしたいなと思ってますので、みなさんにもそのような気持ちで参加していただけたら嬉しいなと思います。

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サドベリースクールって、聞いたことなかった人もいらしたと思うんですが、一般的な学校とはやっている取り組みとか考え方とか、仕組みが違うので僕たちが先入観を持ったまま聞いてしまうと「?(はてな)」が浮かび過ぎてよくわからないということが起こると思うので、まず「これが常識だろう」とか、「これが一般的だろう」「普通だろう」っていうのは置いておいて、素直に興味を持って聞くということをしていただきたいなと思います。ぜひ皆さんにもそんな姿勢を持っていただけたらとても嬉しいです。

僕も新しい本に書いたんですね。好奇心を持って目の前のことに取り組むと、その子の成長とか、没頭することによって視界が開けていくということはとてもあるので。反対に考えると、没頭を止めちゃうことって、思考なんですよね。「これが普通でしょう」とか「そんなのサドベリーだからできるんでしょう」とかっていう先入観を持っちゃうと、没頭することができなくて、没頭の先にある世界に中々触れることができないので、ぜひ先入観とか常識とかっていうものがありそうだなと感じたら、ちょっと脇に置いといていただけたら嬉しいなと思います。

では、蒼ちゃんにたっぷりお話を聞いていきたいと思うんですけど。どこから話してもらおうかなぁ。サドベリースクールが大事にしている5つのことは、最初に見せておいた方がいいですよね?

宗像:そうですね。

藤代:じゃあ、画面共有するので、蒼ちゃんから説明していただきたいと思います。

藤代:みなさん見えてますでしょうか。こちらが沖縄サドベリースクールのウェブサイトで、そこに5つの理念があります。最も象徴的な言葉がここにあるから見てもらいたいですね。

宗像:そうですね。

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藤代:もしかして耳だけで参加している人もいるので、なんて書いてあるかを紹介していただけますか?

宗像:「今日の私は私が決める」です。

藤代:これめちゃくちゃいいですよね。このコピー。この言葉、すごくいい。

宗像:うん。ピッタリ。

藤代:僕もこう生きたい。今も。(笑)

「今日の私は私が決める」がベースとなって、理念があると思うんですけど、その理念を簡単に、これだけ話し出すととても時間が必要ですので、さらっとになるかもしれませんが、蒼ちゃんの口から教えてもらっていいですか。

宗像:はい。
「子どもが自ら学ぶ力を100%信頼する」
「教育に子ども自身が責任を持つ」
「ルールは子ども自身が決める」
「カリキュラム・テスト・評価はない」
「年齢ミックス」
です。

藤代:ありがとうございます。ホームページを見ていただければ、どういうことっていうのも書いてあるのですが、蒼ちゃんなりに「子どもが自ら学ぶ力を100%信頼する」ってどういうことですか?って聞かれたらどんな風に答えますか?

宗像:子どもとか大人とか関係なく、人って与えないと学ばないとか、そういう考えでなくて、自分が「好き!」って思ったときにやるし、「これってどういうことなんだろう?」って思ったときに調べたり実験したりして学ぶと思うので、その子自身が学んでるってそういうことなのかな。って

藤代:確かになー

宗像:サドベリーでは、偉い人がいなくて。校長先生も先生もいないので、自分がやりたいことをやりたい時にやりたいだけできる。っていうので、その子自身が本当にやりたいこととか、気になっていることとかを突き詰められる場です。

藤代:先生がいないって、どういうことでしょうか?っていう人がいると思うけど。。蒼ちゃんはスタッフなんだよね。

宗像:そうです。スタッフです。

藤代:スタッフっていう役割があって、立場だね。先生とは呼ばないんだよね?

宗像:だって、先生じゃないので(笑)

藤代:一般的な先生とはどういう意味で、サドベリースクールではなぜ先生という言葉を使わないのか。みたいなのあるかな?

宗像:まずサドベリーでは、学び方とかも自分で考えるので、先生っていう人が必要なのかどうかとか、欲しいかどうかとかまで自分で考えるので、先生を雇って何か教えてもらいたいと思ったら、先生を作ればいるんですけど、基本的にはいない。頼まない限りいないので。。っていう感じです。

藤代:今回初めて知りました。という方もいらっしゃったので、僕が知っているぐらいの知識レベルでご紹介すると、幼稚園児からだよね?

宗像:5歳から18歳まで。沖縄の場合。

藤代:アメリカのサドベリー地方って紹介でいいのかな?そこで生まれたスクールで、そこに共感した方が世界各地にいらして、その方々が理念とか大事にしていることとかを柱に、ご自身の地域で展開されているひとつに沖縄があります。

5歳から18歳になる子どもたちが、年齢ミックスで一緒にその場で学ぶというか、成長していく場があって、基本的には、ここに(HP)に全部書いてあるんですけど、ルールはなくて、子どもたちが決めていきます。カリキュラムも、テストも、評価もありません。なのでその子自身の興味が生まれたことをとことん突き詰めることができると。逆に言うと、一般的にこれ勉強して欲しいよねっていうことはほとんどやらなくて、例えば算数にずっと興味が向かなかった子は、算数をしないということだよね?

宗像:その人が、その子がやりたいことをやる中で、必要じゃなかったらやらないし、必要だったら、やりたいと思えばやるっていう感じです。

藤代:これは、僕もそうですけど最初は衝撃的過ぎてパニックになっちゃって、よくわからないなぁっていうのがすごくあって。今でこそ、トップダウン的な、僕たちはこうするんだっていうんじゃなくて、子どもたちの意見を聞いたうえで創り上げていこうよっていう考え方もわりと多くなってきたと思うんですけど、でも僕たちのこの、思考の枠みたいなのがあって、その中でこう考えさせるきっかけを作るみたいなのがあると思うんだけど、これすらもない。という感じですよね?僕の知っているぐらいの情報だから、ちゃんと本とか読んだ方がいいかもしれないけど。(笑)

今日、この5つのことは先ほどご紹介しましたけど、これだけについて説明しようと思ったらとても時間がかかっちゃうので、蒼ちゃんともしくは皆さんとの対話の中で、この5つがにじみ出てくるような考え方とか表現とかあると思うので、ぜひそれを受け取っていただけたら嬉しいなと思っております。ホームページ、ぜひご覧くださいね。「沖縄サドベリースクール」で検索するとすぐに出てきますので。

「今日の私は私が決める」これが本当に大事ですので、これも覚えてください。

宗像:「今日の私は私が決める」って、その瞬間その瞬間、私が決めてるっていう感じの意味です。1日の始まりに何をするのか決めるんじゃなくて。

藤代:ああ。なるほど。

宗像:その都度その都度自分が決めてる。やっぱり「自由と責任」の学校なので「自分で責任を持って生きてる」っていう意味です。

藤代:うん。確かに。ついつい『あの人がこうしろって言ったから』とか、僕もよくあるんですけど、1週間前に言ったことはもう自分の中には全然ないのに、なんかそこにとらわれちゃって、『これやり続けなきゃ』とか、今日の自分は『違う』って言ってるのに、1週間前の自分が決めたことを大事にしすぎちゃうというか。。そういうの確かにある。一瞬一瞬なんだね。

宗像:うん。そうですね。
 

サドベリースクールとの出会い

 
藤代:面白い。じゃあ、サドベリースクールに通っていた当時のことを聞きたいなぁと思うんですけど。どのような出会いときっかけでそこに通うことになったのか、そこにいることになったのか覚えてますか?

宗像:覚えてます。小学校3年生の半分くらいまで、公立の学校に行ってて。1年生になった時から違和感があって、納得できないけどやらされるっていうか、納得できないけど謝れみたいなのがあったりとか、あとは、みんながこうだからこうしなきゃいけないっていうのをすごい感じてて。それで色々あって、小3の夏ぐらいに学校辞めて。で、なんか、家族でライオンキングのチケットをもらって東京に行く事があって。その次の日、ボストンのサドベリーに娘が通っていたっていう方の話を聞くみたいな講演会があって、それに家族みんなで行って、「蒼、こんな学校だったら行きたい」って思って、それ言ったら、たまたま東京での講演会に、沖縄から来てる家族が何組かいて、その3家族くらいで「沖縄で作ろうか」みたいになって。それで始まったっていうのがきっかけです。

藤代:じゃあ、当時からあったわけじゃないんだ。そこに。

宗像:そうです。

藤代:作られたんだね。すごい。じゃあ、もう最初、創設のときから知ってるっていうね。たまたま知ったわけでしょ?だってライオンキング見に行ったんだから。

宗像:そうです。

藤代:その時に、知った時のこと覚えてる?感じたこととか。その話を聞いて。

宗像:なんか、動画も見て。けっこう会場の外でみんなで遊んでたんですけど、その時は多分見てて、たまたま。それでいいなって思ったのが運命っていうか、そういうことだったんだな。っていう感じです。

藤代:当時はどこに「いいなー」って感じがあったの?

宗像:みんな好きなことしてて、遊んでいるのも許されるというか、みんなやりたい事を真剣にやっているっていうか、真剣に楽しんでいる。なんか・・フィーリングです。

藤代:あはは。その時は、良さそうって思ったっていう感じ?

宗像:けっこう、強めに思いました。

藤代:強めに思ったんだ。へぇー。要は、没頭してたりそういった状態に周りから見えると思うんだけど、夢中になっているって感じだね。一人一人が夢中になってたように、蒼ちゃんから見えて、そういうところもいいな。と思ったのかもしれないね。

宗像:なんか、自分が思ってた学校の形とは全然違ったのね。

藤代:あぁ。まぁそうだよね。だって小学校3年生だから行ってた学校しか知らないしね。

宗像:そこしかないと思ってたし、みんなそこに通うものだみたいな感じがあったから。

藤代:そうだよね。
 
 
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